2012年5月14日 winebaraoi

早稲田オープンカレッジ 1回目

こんばんは。

 

先日は五月晴れの気持ちよい日曜日でしたね。神田川沿いも新緑がぶわーーっと、近くを通るだけで緑の香りがすがすがしい、本当、良い季節です。
そんな中、私たちは近所の早稲田大学へ。
先日から一ヵ月半にわたり、早稲田のエクステンションセンターにて「日本ワインのオープンカレッジ」が開催、それを受講することとなりました。

日本ワインを愛する会、という会がありまして、そこの会主催で、理事の遠藤誠氏によるレクチャーを中心に、今回は日本各地のワイナリーの方も特別講師としてお話をしていただけるというもの。
日本ワインメインのお店を切り盛りしている身からすると、これは本当に貴重な機会。だって、本当なら自ら各地のワイナリーに行って学ばせていただくところを、造り手さん自らわざわざ、こんな近所の大学まで足を運んで下さるなんて…。ありがたや。早稲田、近くて良かった。

 

ということで十数年ぶりの学生気分も味わいつつ、初回。
初回の特別講師は山形「タケダワイナリー」の岸平典子さんです。パチパチ。

 

ざっくりタケダワイナリーについてまとめると。

 

  • 山形、蔵王連邦のふもと、かみのやま温泉郷近くの高台に位置。
  • 明治初期、政府のワイン造り推奨という時流の中初代武田猪之助氏によりぶどう栽培が開始。現代5代目の岸平典子さんまで代々家族経営で続くワイナリー。
  • ワイン造り開始は1920年。「良いワインは良いぶどうから」をモットーに土造りから始めたぶどう造り、ワイン造り。
  • 自社畑は15ヘクタール。家族経営スタイルの一箇所にまとまった畑としては日本では北海道ワインに次ぐ広さ。
  • ぶどうは自社のほか近隣の協力農家のぶどう。創業以来一貫して山形産のぶどうのみを使用。
  • カベルネ、シャルドネといった欧州品種は樹齢20年、マスカット・ベリーA、ブラッククイーンの日本固有品種は樹齢70年のものも存在。
  • 畑では自然のサイクルを生かした減農薬、無化学肥料、無除草剤、無耕作の自然農法栽培を実施。
  • 栽培から収穫、醸造、瓶詰め出荷まで全て自社で。ぶどうを造って、ワインを造って、売る「ヴィニュロン」。
  •  代表銘柄はスタンダードの「蔵王スター」、フラッグシップの「シャトータケダ」、洞爺湖サミットで供されたシャンパーニュ方式のスパークリング「ドメイヌ・タケダ キュヴェ・ヨシコ」(写真)
  • 国内外での評価も高く、2008年ソムリエ世界チャンピオンのオリビエ・プシェ氏による5点満点中4.5点の評価を受け現地専門誌に掲載。また、2011年「ゴー・エ・ミヨ」ドイツワインガイド編集長ジョエル・ペイン氏による「世界に通じる日本ワイン」12本のうち「ドメイヌ・タケダ ベリーA古木」と「シャトータケダ」の2本が選出される。
  • 「地域活性の場」としてのワイナリーとの考えから、山形在来品種であるデラウェアとベリーAに着目。
  • 自然農法と自然なワイン造りを健全に続けていくこと。

 

 

ふう、長くなりました、すみません。

以上がざっくりとしたタケダワイナリーの概略です。(書こうかどうか悩みましたが、ワイナリーの背景をまとめるというのは、自分の中でも整理がつくのであえて書いてみました。)

 

葵でもグラスワインで何度かお目見えしたこともあり、また、おととし現地に行ったこともあり、葵としては特に重要視させていただいているワイナリーのひとつ。そして、岸平さんは日本初の女性醸造家兼社長、さらには普通の主婦もやっているという、同じ女性から見てもひとこと「スゴイ!」と。

お話を伺って思うことは多々ありますが印象に残ったのは、山形にあるワイナリーとしての存在意義を考え認識し、ワイン造りに対するフィロソフィーが明確なこと。日々変わる自然環境、社会環境の中ワインを造り続け会社を続けていく意思、そして消費者の目線に立ってワイン造りの情報をも提供する姿勢。

特にデラウェアのお話が印象的でした。デラウェアっていうと秋、近所のスーパーでも並ぶいたって普通のぶどう。ワインにはワイン用品種といわれる品種があり(カベルネ、メルロー等)そうした品種から造られるワインのみが評価に値するワインという風潮があります(これはある意味仕方ないのです、本場フランスでの主流品種であり世界中で栽培されるグローバルスタンダードなのですから)。そんな中デラウェアは食用も兼ねている、つまり「本当のワインではない」というレッテルがはられがち。これが岸平さんは気に食わない、と。

デラウェアも栽培から注意して丁寧にワインにすると、品種云々なんていわせないくらいのしっかりとした香りと味わいで「ワイン」として通用するものになります。それをデラだからってだけで評価の土俵にすら上げない現状はいかがなものか。山形でワインをつくっていくと、もちろんカベルネも大事だけれど周りにはいくらでもデラを栽培している農家さんがある、わざわざそれを抜いて別品種を植えワインをつくるなら、栽培の歴史も技術もあるデラをつかってワインを造ったほうが自然だし、山形でワインを造るということは、そういうことも含んでのこと。よく「テロワール(注:ワインを造る気候風土すべての総称、テロワールを反映したワイン造り、というのが世界中で注目、実践されています)」っていうけれど、土と風土と人によって成り立つのがテロワールなら、山形のテロワールを発揮しているのはデラウェアでもあるのではないか。と。

 

この辺はもう、ちょっと専門的になりますが、日々日本ワインを扱って悶々と考えていたことのひとつの答えを頂いたような気がし、同時に日本ワインメインでやってよかったとも思いました。

とにかく!もう長いので辞めにしますが、包み隠さず恥じることのない健全なワインつくりをいかに自然に続けていくか、もちろん凄く大変なことなのですが、岸平さんのワイン造り哲学が一貫しているのでなんだか大変な感じさえ忘れてしまうほど、とにかく自然なワインとワイナリーと人柄でした。

 

そんなタケダワイナリーの、リンゴから造る発泡「シードル」がちょうど今週のグラスワインにオンリストされているので、ぜひ飲んでいただきたいと思います。

来週の日曜もまた早稲田へ行ってきます。また、報告します(長くてごめんなさい)!