2012年5月21日 winebaraoi

早稲田オープンカレッジ 2回目

こんばんは。

先週に続き早稲田大学の日本ワイン講座へ行ってきました。
今回は山梨勝沼の「ダイヤモンド酒造」雨宮吉男さんが特別講師。
1963年設立のワイナリーの3代目、よく「期待の若手醸造家」なんて紹介される才能溢れる方で、ぶどう栽培から醸造、販売広報?まで担う造り手さんです。

葵ではお店のオープン前に勝沼のワイナリーまで訪ねたことがあり、当時、まだそんなに日本ワインの知識がなかったころですが「他の勝沼ワインと違う魅力がある!」と、強い興味と印象を持ちました。
たまたまワイナリーにいらした吉男さんのお母さんから「もうね〜息子が好き勝手やってるから〜」なんて言われつつも、ご丁寧に接客いただいた記憶があります。

雨宮吉男さんですが、20代のころワイン造りの勉強をしに渡仏。日本の大手ワイナリーはボルドーへ研修に行くことが多い中、雨宮さんはブルゴーニュへ。ピュリニー・モンラッシェ村のオリヴィエ・ルフレーヴやサヴィニー・レ・ボーヌ村のシモン・ビーズといった著名な造り手の元で3年間修行。ブルゴーニュとボルドーは2大名醸地ですが、規模も大きくシャトーそのものに価値を見出すボルドーに対して、ブルゴーニュは細分化された小さな畑で農家がぶどう造りからワイン醸造まで行い価値の基準は“畑”。感覚として「農作物としてのワイン」という印象を強く受けます。

雨宮さんはそうしたところが勝沼と似ているのでは、と仰っていました。勝沼も甲府盆地の東斜面に住宅や道路の間を縫う様に畑が点在しています。前回の山形タケダワイナリーのように何ヘクタールもの畑を一箇所にもっているというのは稀で、勝沼では1つのワイナリーが複数、離れたところに畑を所有。また、日本でもっともワイン造りが盛んでその大半が家族経営からスタートしているところも似ていると。ただ畑に対する価値の基準、格付けはまだで、目下整備中とのこと。(これは日本でかなり画期的です!)

ブルゴーニュ的なワイン造りを身につけ帰国。もちろんそこで得たさまざまな技術や方法を取り入れつつも、似てるといったって土壌、気候風土もまったく異なる山梨で、山梨の気候風土を生かすワイン造りをされています。極端な話、ブルゴーニュ的スタイルを踏襲して造るときもあれば、その間逆をあえてやることも。今回セミナーで試飲させていただいたダイヤモンド酒造のワインは2種類、シャルドネとマスカット・ベリーAなのですが、シャルドネの白に関しては間逆で、ベリーAの赤に関しては踏襲して、とのこと。

詳細はいすれ機会があったらご紹介しますが、学んだことをそのまま真似するのではなく、山梨の気候風土をしっかり加味して、同時に今までの山梨では実践されてこなかった醸造技術をも駆使。ワイン造りって1年に1回しかできないので新しいことにトライするのって本当に勇気がいると思います。失敗したら1年の努力が無に帰しますし経営的にも大変なことになります。そうした中、教えてもらったやり方を噛み砕きチャレンジし、しかも結果を出している雨宮さん、すごいです…

ちなみに雨宮さんのワインがどのくらい評価されているかっていう寄り道話を。

フランスでソムリエ世界一に選ばれた方が主催したパーティーで、雨宮さんのつくるマスカット・ベリーAの赤ワインがメイン料理のときに供されたと。その際もう1本出されたワインがDRC(かのロマネコンティを生み出す超名門!)の赤ワイン。山梨のベリーAに対してDRC,失礼承知で書きますが、世間的な価値は価格も含めウン百倍の差があるもの、っていうか普通ぜっっっっったいに!!同じタイミングでは出ないワインです(ごめんなさい、でも本当そういうものなのです)。で、結果、食事と合わせるという意味では決して遜色なかったと。もちろんそのチャンピオンソムリエさんがダイヤモンドのワインを個人的に好きっていう背景があるから(このこと自体すごいことなのです)、お料理もベリーAを意識したものだったかもしれませんが、とにかくそうしたグローバルななかに日本のワインが選ばれるっていうこと自体、本当に快挙だと思います。

最後に、この「マスカット・ベリーA」という品種について。日本で大正時代に新潟で開発されたこの品種は、現在食用も兼ねて広く栽培されています。普通に美味しいぶどうですが、ワインにしたとき特有の甘い香りと軽さが、正直いまいち評価されない品種です。実際、日本国内でならいいけれど国際舞台の競争には勝てないとも言われ、最近新しくワイン造りに参入したところでは栽培されることが少ない品種です。

でも、ベリーAは日本の高温多湿という気候風土に強く栽培がシャルドネやカベルネなどと比べると簡単で(丈夫で簡単ということは農薬や極端な肥料に頼らなくてすむので環境にもやさしい)、日本で造られる赤ワインでは1番生産量があるのも事実。これはワイナリーがっていうより、ベリーAを栽培している農家さんが多いからこそ。実際雨宮さんのところでもベリーAは栽培農家さんから購入したものがほとんどだそうです。

せっかく気候風土に適した経験値の高いぶどうがあるのならば、それをもっともっと品質を高め結果美味しいワインを造り評価され、その評価を農家さんと分かち合う。「農家さんとの情報・技術交流を通して、お互いに品質向上に努められるような信頼関係を築き上げていきたいと思っています」と雨宮さんご本人の言葉です。

マスカット・ベリーAをもって世界に挑戦していくダイヤモンド酒造。お話を伺ってますます応援したい気持ちになりました。

これを長々と読んでくださったかたも、ぜひベリーA、飲んでみてください。なかなか雨宮さんのものほどしっかりとした味わいのものは少ないですが、最近本当に目をみはるものも増えていますよ♪

 

次回は長野「楠木ワイナリー」さんです。

ご拝読、ありがとうございました。